2010年メリーモナークフラフェスティバル(フラ界の最高峰のコンテスト)にて、ミスアロハフラの栄冠を圧倒的な努力によって勝ち取ったマヘアラニミカ・ヒラオ・ソレムさん。2年後、思い出が詰まったハラウに別れを告げ、当時27歳という若さで指導者への転身を決意します。
たった17名でスタートしたKILOHANAは、3年後、95名という大きな家族に。今年3月には念願のスタジオをオープン。毎月来日し、全てのクラスを直接指導しています。
私はハワイのダンサーと同じレベルに日本人ダンサーを育てたいの。人種なんて関係ない。
キロハナスタジオのホームページ動画のなかで、きっぱりと言い切った彼女のこの言葉。
パフォーマーとしてだけでも十分活躍できるはずな彼女が、何故日本で後進の育成を決意したのか? そして、この言葉の中にはどんな思いがあるのでしょうか?
ミカさんの思いにフォーカスしたいと思います。
マヘアラニ・ミカ・ヒラオ・ソレム プロフィール
1986年日本・ハワイ・スウェーデンの血筋をひく三姉妹の末っ子としてオアフ島で生まれ育つ。3歳からフラを踊り始め、マプアナ・デ・シルヴァ、カレオ・トリニダッド、アンソン・カウイオナラニ・カマナオに師事。
ハワイの名門カメハメハ・ハイスクール在学中に世界を回る公式フラグループである「ハワイアンサンブル」に抜擢され活動する傍ら、プロダクションに所属しショーダンサーとして数々のステージを経験。2010年、メリーモナークフェスティバルにてミスアロハフラの栄冠を獲得。
明るく前向きで、愛あふれるキャラクターと優雅なフラは、多くのファンを魅了している。
現在はハワイ・日本・ロサンゼルスの3拠点を中心に活動。毎月来日し、KILOHANAでの教育に情熱を注ぐ。
KILOHANA JAPAN HP:http://www.kilohana-japan.com/
指導者への転身
ミスアロハフラに選ばれた翌年(2011年)も、メリーモナークの出場メンバーとして練習をしながらクムのお手伝いとして出場曲の振付や指導を担当していたの。自分が振り付けて指導する曲をダンサーとしても踊ることに違和感を感じながら過ごしていた時、「私は、もっと出来ることがあるのでは無いか?」と気づいたの。
そして、「フラの世界で闘いつくした」って。
それまでもパフォーマーとして何度も来日していたから、日本人のフラを見る機会はたくさんあったの。その頃の私は、ハワイのクムから習っていても、日本の先生から習っていても、誰が教えようと、どうしても…、日本人のフラは、みんな同じ様に見えてしまっていた。
でもある日、あるクムが教えるハラウのフラダンサーが、ハワイの女の子と同じレベルで踊っているのを目にしたの。
本当に何人かだったけれど、その時もっともっとハワイと同じレベルの日本人ダンサーを増やしたい!って思った。
もうそろそろ、日本人は小さな殻の中で踊るのを、辞めないといけないって。(小さな殻については後述)そのように考えが変わったの。
だから日本で教えることになったことは、とっても自然なことだったの。
小さな殻から解き放ちたい
日本での初めてのレッスンの時、キロハナレディース(キロハナの生徒さんの意味)に自分の思うままに「鳥を表現してみて」って言ったことがあるの。
彼女たちは「鳥のように踊る」ことが分からずに戸惑っていた。
その後、鳥の振付をお手本で見せたのだけれど、彼女たちは、「えーっ難しそう…」「今まで見たことの無い動きだから出来ない」って、自分達が踊る前から言ったの。
その時にものすごく頭に来て(笑)
「最初から出来ないって決めつけるなら、絶対に出来ない。どうして踊る前から決めつけるの?」って怒ったの。
彼女たちは私のレッスンを受けるために時間とお金をかけて学びに来てくれているのに、どうして私に習うことだけで満足なのか(40%位の満足で終わるのか)理解できなかったの。
私と同じ人間なのだから、絶対に私と同じ様に踊ることが出来るはずなの。
最初から「出来ない」って決めつけているから、小さな殻に閉じこもったまま進歩しないのよ。このメンタルを変えなければ「いつまでたってもハワイのダンサーと同じレベルに踊ることは出来ない」と思ったの。
私のフラシスターたちも全員がハワイアンな訳じゃない。フィリピン人だったり日系人だったり、人種なんて関係がないのよ。要は、自分が「どう考えてどう踊るか」によって、ダンサーとしていくらでも成長できるの。
それに、実際にハワイアンだからって、全員がサーファーになれる訳じゃないし、上手なフラダンサーって言う訳では無いのだから。
日本人は「これをしたらみっともないかな」とか「これをするの恥ずかしいな」って思いがちよね。
自分を信じないで踊っている自体が「みっともない」から、実際に知識が無くても「知ってます」って気持ちで踊ってほしいな。
だって「自分を信じなければ、他の人に『この人の踊りは素敵だな』って思ってもらえない」と思うの。
フラだけじゃなくて、ヒップホップやバレエで活躍するプロの日本人ダンサーでも同じだと思う。だって、日本人の凄いダンサーは黒人のダンサーと同等に踊っているし、そもそも「私は黒人みたいには踊れない」って思っていないはずなの。
他のダンスのジャンルでは日本人のレベルが高いのに、どうしてフラだけはハワイアンだけが上手でなければならないのか、それが私には不思議でたまらないの。
私はミスアロハフラという経歴を持っているけれど、生徒さんたちと同じ初心者の時があった。何度も間違えては直され、間違えては直されを繰り返して、今まで来たわ。そう、間違えなければ上達しないし、間違えるのを怖がっていたら、私もどこがダメなのか注意することも出来ない。
精神力を鍛えたい
ハワイの文化も勿論大切な知識だけれどプロのダンサーとしての心構えも教えていきたいの。
私は生徒さんたちに、突然「これをしなさい」って無茶ぶりをすることがあるのね。
例えば、衣装替えを1分でやりなさい、って言った時に、
「そんなの無理ーー!髪型も変えなくちゃ行けないのに!」「失敗したらどうしよう」って生徒さんは言うんだけど、私は「Do it!!(やりなさい)」って言う。
でもね、無理だって思っていたことが出来る様になった時に「私は出来る!」って自信がつく。次90秒で着替えて、となった時には、余裕で着替えられる様になる。そうやってどんどん自信を持たせて、可能性をもっともっと引き出していきたいの。そう言った課題を常に与えていますね。
赤ちゃんは何も考えずによちよち歩きをする。もし赤ちゃんが大人の思考を持っていたとして「転んだらどうしよう」って考えてしまったら、その赤ちゃんはずっとハイハイしたままよね。
何もしない前から、「私は無理」、「出来ない」って思ってしまったら、人としての成長は絶対にないと思うわ。
キロハナスタジオのこだわり
ハワイアン伝統文化は勿論好きだけれど、29歳の普通の女の子でもあるから、様々なパフォーマンスや色々な音楽も大好き。色々なアートを産み出すクリエイターも好きなの。だからどんなジャンルの方が、このスタジオを訪れても楽しんでもらえるような場所にしたかった。
ハワイ柄やモチーフばっかりの場所だと、他の人(ハワイアン文化を知らない人や興味を持っていない人)からすると、「ここは自分とは合わないな」って思われてしまうから使わなかったの。
スタジオに来る人みんなにポジティブなエナジーを感じてもらえる場所にしたかった。
でも、よーくみてみると、このクッションはタパ柄だし、このタトゥーアートにはトライアングルが沢山入っているから「分かる人が見たら分かるハワイテイスト」を取り入れているの。
もちろん私もこのスタジオを使う一員だから、自分にとって心地いい場所にしたかったし、クリエイティブなことを産み出せる場所にしたかったの。そして、私がココに居なくても、みんなが常に私を感じてもらえたら良いなって。
ダンススタジオだけでは無く、今日みたいにインタビュースペースとして使ったり、フォトスタジオとしても使ってほしいわ。
ハワイのお気に入りのお店とライフスタイル
ホノルルにあるHelena‘s(http://www.helenashawaiianfood.com)というハワイアンフードのお店です。とっても美味しいわよ!
最近ハワイは殆ど帰っていないの。メインはロスアンジェルスと日本を行ったり来たり。この間メリーモナークの時には久々に帰った。なるべく長く居たいけれど中々難しいかな。
最後に
キロハナを設立してから、3年しか経っていなくてまだまだ赤ちゃんだから、今は日本でキロハナレディースの育成をしっかりやっていきたいわ!
まだまだ日本でやるべきこともたくさんあるし、様々なイベントに呼んでいただいて活動したいです!
1つのことを極めるって、圧倒的な努力が必要になると思うの。
私の今の踊りは、上澄みでしかない。
でも今に至るまで、たくさん練習を重ねて、人生経験も…、そう、辛さも、苦しさも痛みも味わってきた。自分のレベルを上げるためには、段階を踏んでいく必要があると思うの。更に言えば、フラに対する心構えを変える必要がある。
辛い努力をしないで、いきなり自分のレベルを上げることなんて誰にも出来ないでしょう?その過程を辛いから諦めます、って思ったら成長は無いよね。
日本の課題はたくさんあるけれど、感情を表にぶちまける事に慣れていないから、もっと自分の中と表現を繋げるダンサーになってほしいの。
KILOHANAに来て恥ずかしがっていたら絶対に踊れないわ。お尻大きく動かして!って言われたら、恥ずかしいって思っていても、動かすしか無いの。
例えば、フラの曲の9割はlove makingの内容なのに、私が曲の意味を説明している時、みんな恥ずかしそうな雰囲気になってしまう。でもみんな大人なんだから意味は分かるはずだし、お子さんがいらっしゃる人だって居るのにね。
「恥ずかしい」とか「無理」って思っているヒマはこの教室には無いの。
編集後記
どんな難題でも乗り越える精神力、固定観念にとらわれずに、まず受け入れ、やってみるという素直さと勇気、メンタルを養うことは、どの世界に於いても通じるものだと感じました。
ぶれない目標を持つ彼女の口から出てくる生徒さんへの思いは深い愛情にあふれています。指導者としての信念、お母さんのような大きな愛情。そしてお茶目なお姉さんの顔。若きリーダーを慕う人が多い理由も分かりました。この若さで、いつリーダーとしての考え方を学ぶ機会があったのか。もっとそんな部分を聞きたいと感じました。
今年、弊社が主催する昭島アロハカーニバルではミカさんをゲストに迎え、イベントのファイナルステージを飾っていただきます。ぜひミカさんの生の魅力を感じに遊びにきて下さい!(9月13日日曜夜18時30分頃より)
通訳:Midori Kurosaki(KILOHANA JAPAN)
インタビュー・編集:Malie Yasuda(Alohawave)
写真:Yoshiko Shoji(Alohawave) レッスン風景写真提供:KILOHANA JAPAN